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【TED】イーロン・マスクが取り組む3つのイノベーション

昨年2012年に宇宙業界に激震をもたらしたスペースXの国際宇宙ステーションへの物資補給。
その偉業を成し遂げたスペースX創業者のイーロン・マスクはインターネットベンチャーZip2から始め、PayPalでネット決済を変え、テスラで電気自動車を実用レベルにし、ソーラーシティでは太陽光発電の普及を加速させ、様々な分野で革新を起こしている今世界で最も注目されている起業家だ。

聞き手はクリス・アンダーソン(以下C)イーロン・マスク(以下E)

 

テスラ・モーターズ〜電気自動車におけるイノベーション〜

Image credit: bloomberg

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C イーロン、どんなクレイジーな夢が電気だけで動く車を作って自動車業界に挑戦しようなんて気を起こさせたんですか?

E その理由は大学時代にさかのぼります。当時未来の世界や人類の将来に最も影響する問題はなんだろうかと考えていました。そして持続可能な輸送手段と持続可能なエネルギー生成が極めて重要だと思ったのです。環境問題を別にしても、持続可能なエネルギーの問題は、私達が今世紀中に解決しなければならない最大の課題です。仮に二酸化炭素排出が環境に悪くなかったとしても、炭化水素資源をいずれ使い果たしてしまうことを考えれば何か持続可能な手段を見つける必要があります。

C アメリカでは電力のほとんどを化石燃料を燃やすことで得ています。電気自動車がどうしてエネルギー問題の解決に繋がるんですか?

E 答えは2つあります。1つはたとえ同じ燃料を使って発電所で発電し、電気自動車を充電するものであっても、その方が状況は良くなるということです。例えば天然ガス。これは最も一般的な炭化水素燃料ですが、現在のゼネラル・エレクトリックの天然ガスタービンで燃やすと、効率は60%くらいですが、同じ燃料を内燃機関の自動車で使うと効率は20%程度になります。その理由は発電所では重量のある物やかさばるものでも使うことができ、排熱でガスタービンを回し、二次動力源とすることもできるからです。結果として送電時のロス等を考慮しても発電所で燃やして電気自動車を充電する方が同じ燃料を少なくとも二倍効率よく使えるのです。

C スケールメリットがあるわけですね。

E そうです。もう一つの理由は、持続可能な発電手段はどのみち必要になるということです。
そうであるなら輸送手段として電気自動車を使うのは理にかなったことでしょう。

C テスラの組み立て工場がありますが、この自動車の製造工程のどこが革新的なのでしょう?

E 電動輸送時代の到来を加速させるためには、実際あらゆる輸送手段は完全に電化されるだろうと思っています。ロケット以外は。ニュートンの第三法則を覆す方法はないので。
問題はどうやって電動輸送時代の到来を加速させるかということです。自動車に関して言えば、エネルギー効率の極めて良いクルマを考えて出す必要があって、それにはまず車体を凄く軽くすることです。ご覧頂いているのは北米で生産されているものとしては唯一総アルミ製のボディとシャーシです。おおきなバッテリーパックを付けても軽量な車を創るためにロケット設計の技術をたくさん取り入れています。そうしてこのサイズの車としては最小の抗力係数を持っています。
だから基本的にエネルギー消費量が非常に低く、また最も先進的なバッテリーパックを備えていて、実用に耐える走行距離を実現しています。実際400kmくらい走ることができます。

C バッテリーパックは凄く重たいものですが、それでもうまくやれば軽量な車体と重いバッテリーの組み合わせで優れた効率性を実現できるということですね。

E ええ、そうですね。バッテリーの重さを相殺するため、車の他の部分を非常に軽くし、高速で長く走れるよう空気抵抗を小さくしているんです。モデルSのユーザーの中ではどれだけ走れるか競うなんてことも行われています。最近一回の充電で676km走ったという強者がいました。

C その記録を作ったブルーノ・バウデンがこの会場にいますよ。

E それは凄い。

C それはいいことなんですが、記録を作ろうと時速29kmでずっと走っていたため、警官に止められたそうです。(笑)

E そこまでしなくとも、通常のコンディションで時速105kmで400km走れます。悪くない数字でしょう。

C この車を運転していて一番驚くことはなんでしょう?

E 電気自動車を扱っていると、車の反応性には本当に驚くものがあります。皆さんにあの感覚を体験して頂きたいのですが、車に溶け込んで、一体になったかのような感じがします。ターンや加速が超能力でも使っているかのように瞬時にできるんです。電気自動車の反応性の為せる技です。
ガソリン自動車にはできません。これはとても本質的な違いで、実際に運転してみて始めて分かることです。

C とても素晴らしい車だと思いますが、高価ですよね。これを大衆向けの乗り物にする計画というのはあるんでしょうか?

E ええ、テスラではずっと3段階のプロセスを考えてきました。第一段は少量の高価な車、第二段では中くらいの数量と価格の車、第三段は大量で低価格な車です。だから今は第二段階です。最初は10万ドルのスポーツカーのロードスターでした。次が5万ドルからというモデルS。そして第三世代の車は3〜4年内に開発したいと考えていますが、3万ドルくらいになるでしょう。本当に新しいテクノロジーというのは大衆市場に受け入れられるまでに3つのメジャーバージョンを要するのが普通です。私達はその方向に進んでおり、実現できることに自信を持っています。

C 短い通勤であれば運転していって、帰ってから家で充電すればよいわけですが、高速な充電ステーションの全国的なネットワークというのは現在ありません。そのようなものは実現されるのか、それとも一部の主要ルートにだけできるのでしょうか?

E 実際にはみなさんが思っているよりずっと多くの充電ステーションがあります。テスラではスーパーチャージングテクノロジーというのを開発していて、モデルSを買った人は永久的に無料で利用できます。これは多くの人が知らずにいることかもしれません。カリフォルニア州とネバダ州は既に網羅していて、東海岸のボストンからワシントンDCの間も網羅しています。今年末にはロサンゼルスからニューヨークまで、スーパーチャージャー網で大陸を横断していけるようになります。
これを使うと他のものより5倍速く充電できます。重要なのは運転時間と停止時間の比率を6〜7程度まで持っていくということです。3時間運転したら20〜30分休憩したいでしょう。普通の人はそうします。だから朝9時に出発したら昼には休憩して、何かお腹に入れ、トイレに行き、コーヒーを飲んでから出発するという具合です。

C 消費者向けのアピールとしてはフル充電には1時間かかり、10分ではできないことをわかってもらう必要があるけど、良い点は環境保護に貢献できることで、おまけに電気がタダになって一文も払わなくていいと。

E 多くの人は1時間でなく、20〜30分休むという使い方をすると思っています。実際のところ、260〜270kmくらい走ったら、30分ほど休んでから出発したほうが良いでしょう。それが自然なリズムです。

 

ソーラーシティについて〜太陽光発電システムにおけるイノベーション〜

Image credit: The NASDAQ OMX Group, Inc.

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C なるほど、これはあなたのエネルギーへの取り組みの一面で、別にソーラーシティという太陽光発電の会社もやっていますね。これはどこが特別なんでしょう?

E 前にも言いましたが、私達は電気の持続可能な消費だけでなく、生産も行う必要があります。
発電の中心的な方法は太陽光になると私は確信しています。これはいわば間接的核融合です。
空には太陽という巨大核融合炉があり、私達はただそれを人類文明のために少しばかり利用すればいだけです。多くの人があまり意識していないのは、世界は既にほとんど太陽エネルギーで動いているということです。太陽がなかったら地球は絶対温度3度の凍った世界になってしまいます。
水が循環するのも太陽の力によってです。生態系全体が太陽エネルギーで動いているんです。

C でも石油には何千年もの太陽エネルギーが凝縮されているわけで、太陽光でそれと張り合うのは難しいでしょう。たとえばシェールガスとはとても競合できない。どうやってビジネスにしようとしているんですか?

E 実際のところ太陽エネルギーは天然ガスを含め、あらゆるものを圧倒することになるだろうと思っています。

C どうやって?

E そうでなければいけません。でないと深刻な問題を抱えることになります。

C ソーラーパネルを消費者に売っているわけではありませんよね?何をやっているんですか?

E いいえ、売ってもいます。ソーラーパネルを買うこともできるし、リースすることもできます。多くの人はリースする方を選びます。太陽光発電のいいところは燃料も運用コストもかからないことで、一度設置すればほっといても何十年も機能し続けます。多分100年くらい使えるでしょう。だから重要なのは初期の設置コストをいかに引き下げるか、融資のコストをいかに低くするか。この2つが太陽光発電の主要なコストなんです。この面で私達は大きな前進をしており、それが天然ガスに勝てると自信を持っている理由です。

C つまり消費者に対するウリは初期費用がそんなにかからず…

E ゼロです。

C 初期費用ゼロで皆さんの屋根にパネルを設置しますと、その後お支払い頂くリース期間は通常どれくらいですか?

E  20年リースが一般的です。ここでのセールスポイントはあなたが言われたように明快で、初期投資不要で電気代が下がる。

C いい話だと思います。消費者にとってはいいことずくめですね。リスクなし、支払いは今よりも下がる。でもあなたにとってはどうですか?長期的にはソーラーパネルの電気は誰のものになるんですか?会社としてどうやって利益を出すのか?

E 基本的にソーラーシティ自身は資金を企業や銀行から調達します。Googleは大きなパートナーの一社です。彼らは投資のリターンを期待しています。この資金を使ってソーラーシティはソーラーパネルを買って屋根に取り付け、家や会社の持ち主に月々のリース料を払ってもらいます。リース料は電気代よりも安くなります。

C あなた自身はその電力から長期的に利益を得られますね。

E そうですね。新しい種類の分散型電力網を構築しているわけで、結果として巨大な分散型電力網ができます。これは良いことだと思います。電力はずっと独占事業で、人々に選択肢はありませんでした。この独占に競争をもたらせる始めてのチャンスなんです。電力網は電気会社が独占していたのを、今や皆が屋根の上に持てるようになった。家を持つ人や企業にとってとても力になることだと思います。

C そしてあなたは将来、アメリカの主要な電力源は10年、20年あるいはあなたの生きているうちに太陽光になると思っているわけですね?

E 太陽光が主力になることにはとても自信を持っています。多分大半がそうなるでしょう。私は20年以内に主力が太陽光になると予言していて、ある人と賭けもしています。

C 主力の定義はなんですか?

E 他のどの電力源よりも多くなることです。

C なるほど、ちなみに誰と賭けをしたんですか?

E 友人ですが、名前は伏せておきます。

C 私たちだけに教えてよ(笑)

E この賭けをしたのは2、3年前なので、18年後には他の何よりも太陽光発電が多くなっていると考えています。

 

スペースXについて〜宇宙輸送におけるイノベーション〜

spaceX_elonmusk
C あなたがしたもう一つの賭けの話にいきましょう。ある種クレイジーな賭けです。あなたはPayPalを売って得た資金で宇宙事業を始めることにしました。よりによってなんでまたそんなことを?(笑)

E その質問ならよくされます。宇宙事業で小金持ちになったという男のジョークでからかわれかねません。お察しの通り「元々は大金持ちだった」というのがオチです。だから先手を打って大金を小金に変える一番早い方法を探していたんだと答えることにしています。すると相手は「マジかよ?」と。

C 妙なことにあなたはマジだった。それでどうなったんですか?

E 危ない時もありました。全然うまくいかなくて瀬戸際までいきましたが乗り越えられました。
2008年のことです。スペースXの目標はロケット技術を発展させることです。人類にとって宇宙に進出する文明になることは極めて重要だと思っています。そのために素早く完全に再利用できるロケットが必要なんです。

C 人類が宇宙進出する文明に?それは子供の頃からの夢でしょうか?火星に行くことを夢見ていたとか?

E 子供の頃確かにロケットを作ったりしましたが、将来の仕事としては考えていませんでした。
それはむしろ未来をワクワクする刺激的なものにするために、何が起きる必要があるか、という視点から来たものです。これは根本的な違いをもたらすと思っています。宇宙に進出する文明を持ち、星々を探検し、複数の惑星に広がる。凄くエキサイティングな人類の未来と、永遠に地球に閉じ込められたまま、絶滅をもたらす事態が起こるのを待つという違いです。

C あなたはロケット製造のコストを75%も削減したとか。計算の仕方で多少数字が変わりますが、どうしてそんなことができたんですか?NASAはずっと長い間やってきたわけですよね?

E 私達は様々な分野の技術を大きく前進させました。機体、エンジン、打ち上げの運用。
革新したことは山ほどあります。私達がしたことをこの場でお話するのはちょっと難しいですが。

C 真似されたら困りますからね。特許をとってないから。これは私からすると凄く興味深いことです。

E ええ、特許は取りません。

C 特許をとるのは、とらないより危険だと?

E 我々の主要な競争相手は国家で、特許を強制できるか、疑わしいもので。(笑)

C 凄く興味深いですね。でもやらなければならない大きなイノベーションがまだ残っていますね。
それについて話してください。

E ロケットの最大の問題が何かというと、使い捨てだということです。現在のロケットはみんな使い捨てです。スペースシャトルは再利用可能ロケットをつくる試みでしたが、メインタンクは毎回捨てていたし、再利用される部分も、次の飛行までに9ヶ月と1万人の人手をかけて修理する必要がありました。結果としてスペースシャトルは一回の打ち上げに10億ドルもかかり、どう考えても割が良くない。スペースXの開発中の再利用ロケットでは、ロケットの各段が自分で打ち上げ場に戻ってきて、数時間内にまた打ち上げの準備ができるようになります。

C 凄い。本当の再利用可能ロケットですね。

E ええ。(拍手)多くの人が知らないのは燃料のコストは凄く小さいということです。ジェット機と大して違いません。燃料のコストはロケットのコストのうちの0.3%ほどに過ぎません。
ロケットが本当に再利用可能になれば、宇宙飛行のコストは100倍も改善できるんです。

それが再利用が重要な理由です。私達が使う輸送手段は飛行機、電車、自転車、バイク、馬、いずれも再利用可能で、ロケットだけが例外です。宇宙に進出する文明になるために、これは解決すべき問題なんです。

C 先ほど私に聞かれましたが、毎回船を焼かなきゃいけないとしたら、船旅に果たしてどれほど人気があるかと。

E ある種の船旅にはかなり問題でしょう。

C 高くなるのは確かですね。再利用は確かに転換をもたらす技術で、あなたの夢である、火星への大規模移住の実現に道を拓くことになるでしょう。あなたは火星への移住をかんがえているんですよね?

E ええ、スペースXは他の会社や政府と協力して、そういう方向に進まなければと思っています。
複数の惑星に広がり、他の惑星、現実的な選択肢としては火星ですが、そこに基地をつくり、複数の惑星にまたがる種となるまで築いていく必要があります。

C その再利用可能にしよう、というのはどこまで進んでいるのですか?

E 最近その点で大きな進展がありました。グラスホッパーテストプロジェクトと呼んでいますが、垂直着陸の部分をテストしています。この飛行の最終段階が特に難しいんですが、テストで良い結果が出ています。

 

世界を変えたければ物理学を勉強しよう。

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C すごいね(拍手)一体どうやってやったんですか?PayPal、ソーラーシティ、テスラ、スペースX、これらのプロジェクトはどれもかけ離れていて、物凄く野心的なプロジェクトです。どうしてそのような革新が一人の人間にできるのでしょう?あなたの何が特別なんでしょうか?

E 正直なところ、よくわかりません。良い答えを持ち合わせていません。物凄く働きはします。

C 私は仮説を持っています。

E 聞きましょう。

C 私の理論では、あなたはデザインを、システムのレベルで考える能力があって、テクノロジーとビジネスとデザインを、TEDならぬTBDですね、これらをひとまとめにして類まれな方法で総合することができる。そしてここが肝心なんですが、そのまとめあげたものに凄く自信を持っていて、とんでもなく大きなリスクも負うことができる。あなたは自分の財産をそれに賭けました。しかも何度もやっています。ほとんど誰にもできないことです。その秘伝を教えることはできないでしょうか?それを教育システムに組み込んだり、誰かに伝えることは出来ないものでしょうか?あなたがしたことは本当に驚くべきことだから。

E ありがとうございます。考えるための素晴らしいフレームワークがあります。
物理学です。原理と推論、つまり物事を本質的な真理まで煮詰め、そこから推論するということです。アナロジーで推論するというのでなく、我々は生きていく上でアナロジーによる推論をしています。これは本質的には人のしていることを真似て少しだけ変えるということです。それは必要なことです。そうしなければ、日常生活も精神的に困難になります。しかし、何か新しいことをしようという時は物理学のアプローチを使う必要があります。物理というのは、量子力学のような直感に反する新しいものを見つける方法なんです。だからそのようにするのが重要だと思っています。またネガティブなフィードバックに注意を払うことも重要です。特に友人に意見を求めることが大切です。シンプルなアドバイスに聞こえるかもしれませんが、ほとんど誰もやっていないことで、凄く力になるんです。

C これを見ている子どもたち、物理を勉強しよう。この人に倣って丸一日でも続けたいところですが、TEDに来ていただき、感謝します。

E こちらこそ。

C 凄く良かった。本当にイカしてました。

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