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【TED:堀江貴文】宇宙は誰にでも当たり前に行ける場所になる

 普段本メディアで取り上げている海外の宇宙ベンチャーの中でも、ロケット開発をする輸送系ベンチャーは大抵シリコンバレーのエンジェルが自身の資産も多く投資して立ち上げることが多い。スペースXのイーロン・マスク氏(Paypal、Tesla)、ブルーオリジンのジェフ・ベゾス氏(Amazon)、ストラトローンチ・システムズのポール・アレン氏(Microsoft)等。 堀江貴文氏率いるインターステラテクノロジズはこの流れを汲んでいる。その堀江氏がTEDxSapporoにて、自身の宇宙開発論を披露していたので、書き起こしてまとめた。

Image credit: TEDxSapporo

Image credit: TEDxSapporo

みなさん、はじめまして。堀江と申します。よろしくお願いします。
このステージいいですね。なんか今まで体験したことない、いい感じのステージです。
TEDってイベント、なんか僕がいない間に日本でも結構メジャーになってて。(会場:笑)
ニュースだけで聞いてたんですけど、まさか自分がこんなところで話すことになるとは思わなかったです。

 

きっかけは旧ソ連の宇宙ステーション「ミール」

Image credit: NASA

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実は北海道にゆかりのある話ってことで、ちょっと考えていて、やっぱり北海道と言えば宇宙だろうと。会場(笑)
多分みなさんそうは思ってないと思いますけど、私にとって北海道はだいたいゴルフしに来るか、宇宙かどっちかなんですよ。
僕、ずっとロケットつくりたくて。ロケットつくりたいというか、宇宙は誰にでも当たり前にいける場所になるべきである、というふうに私は思ってまして。それをやるためにはどうしたらいいのかっていうのを、10年くらい前から結構模索をしていて。きっかけは2000年くらいに旧ソ連の宇宙ステーション「ミール」っていうのが、メンテナンスの費用がソ連崩壊して、出なくなっちゃって、老朽化もしてるし廃棄するしかないってことになって、買ってくれる人がいないかってことで、20億円で売りに出てたんですよ。おお二十億か!みたいな。ちょうど私が経営してた会社が上場するかしないかくらいの時で、ちょっと20億は難しくて、さらにメンテナンス費用が年間20億……(会場:笑)
まあ結構キツイなと。ということでちょっと断念したんですけど、わりと宇宙が身近に感じられた瞬間だったんですよね。それまで宇宙開発というと、国家が主導して莫大なお金をかけて、国家の年間予算の何割か使ってアポロは月に行ったりとか。
でもあれでしょ、皆さんアポロが月に行ったって思ってないんですよね。(会場:笑)
なんか最近アンケート取ると3割とか4割の人が行ったことがないと思ってるって聞いて、僕ちょっと愕然としちゃうんですけど。
そういう人には「From the Earth to the Moon」っていうトム・ハンクスさんがアメリカでテレビドラマシリーズを作られてるんで、
全七巻セットかな、今でもDVDで売られてるので、是非それをご覧になってください。アポロは月に行ってますから。

 

宇宙に行きさえすればいい、世界一ローテクなロケット開発

Image credit: blog.nvs-live.com

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そういうものすごい予算をかけてやっていた宇宙開発っていうのが、20億円ってなんか手が届きそうな額だなって。僕ら民間企業でも出来そうじゃないかっていうふうに思えた瞬間だったんですよ。それから何年間か会社忙しかったんですけど、ちょっとある程度余裕ができて、自分も株を売ってある程度資金ができたんで、これはもうやってみようかと。
なんで宇宙がこんな身近じゃないんだっていうことはさっき言ったお金の問題だと思ってるんですね。宇宙飛行士って今まで500人あまりしかいないんですよ。日本人で始めて宇宙に行った人って誰かご存知の方いらっしゃいますか。秋山さん、そうですね。
もうなんか僕の講演とか聞いてる人はすぐわかると思うんですけど。大体みなさんおっしゃるのがですね、JAXAの毛利さんです。
毛利さんじゃなくて、TBSの秋山さんって人がロシアのソユーズ宇宙船で始めて宇宙に行ったんです。その時TBSがロシアに払ったお金が15億円くらいだったそうです。それが今いくらかというと、一人あたりの打ち上げ費用が7000万ドルを超えていると。
なぜか、わかりますか?スペースシャトルが終わったからです。スペースシャトルが終わって、アメリカは宇宙に人間を送る手段を失ってしまったので、どんどん値段が高騰しちゃって。ソユーズの有人版って多分年に二、三機しか打ち上げられないと思うんですよね。
今のグーグルの創業者のセルゲイ・ブリンが個人的に資金を供給していて、有人宇宙船の生産ラインを増やそうとしてます。
これ、市場原理って本当に面白いもので、ロシアしか今つくれないわけです。勿論中国もつくりだしましたけど、有人宇宙船を商業打ち上げできるほどの信頼度を持って、できている国ってロシアしかなくて、その単一企業が作ってるから、生産ラインを増やさなければ、ニーズが多くなればなるほど、値段はどんどん高騰していくわけですよ。だから高いままなんです。競争がないからコストが下がらない。勿論特殊な技術を沢山使っているというのもあります。ロシアの場合はソユーズ宇宙船、設計したのは1960年代。もう凄い古い。アポロがアメリカの月に行く計画だとしたら、ソユーズはソ連が月に行くために計画した宇宙船だったんです。なので古い技術が使われてる。
古い特殊な技術が使われてることも競争を阻害してる。なので僕らはコストダウンをしなきゃいけない。僕らのテーマって何かっていうと、世界一ローテクなロケットを製造しようと。宇宙に行きさえすればいい。どっかの目的地に行きたい時に、その中で一番ローコストな手段があればいい。だから特殊な部品は一切使わない。汎用品、できればホームセンターで売っているような部品で作りたい。
そしてこれ大事なところなんだけども、加工が容易であると。凄い特殊な職人技が必要なものは一切使わない。大体モノづくり日本みたいな話になると職人さんの技が必要だとかそれを磨くとかいう話になるんですけど、基本的にはそういうものは一切使わない。

 

試行錯誤の要素技術〜姿勢制御と再生冷却〜

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僕が出所して二日後くらいに北海道の大樹町で打ち上げ実験やってるんですけど、ものの見事に爆発してしまいましてですね、この映像が全国ネットで流れて、テレビ局の人が喜んでるのが目に浮かんだ。(会場:笑)チキショーって思ってました僕ホント。
それのリベンジ打ち上げを8月10日に予定しています。

姿勢制御のことなんですが、ロケットは通常空気がないところで飛びます。例えば空を飛ぶ乗り物で言えば、飛行機があります。方向舵とかエルロンとかそういうので、三軸の制御をやるんですけれど、そういうものはロケットでは(空気がないから)使えないので、どうやってやるかっていうと、エンジンの推進の方向を変えたりするジンバル制御だったりとか、パルスジェットみたいなものを噴き出して、ロール制御したりとかしています。
空気がないところで、ロケットがどの方向を向いているのかっていうのをリアルタイムで解析しながら、姿勢制御をする。
これ結構難しい技術なんです。こういうのに例えばGPSだったり、加速度センサーだったり、そういったものを使います。
ただし、我々ローコストなロケットを考えてますので、汎用品で安いものを使わなければいけない。結構苦労してます。
なぜかっていうと、例えばGPSだと、加速度のキャップみたいなものが決められていて、なんのためにそんなものが入っているかというと、軍事転用を防ぐためです。結構高性能なGPSの受信機っていうのが、スマートフォン向けであったりだとか、車載向けであったりだとか、色んなところで使われてるんですけど、これを万景峰号で北朝鮮持ってったらそのままロケットの姿勢制御使えちゃいますので、そういったものには使えないということで、ソフトウェアのプロテクトみたいなものが入っているんですね。そういうの外してもらったりとか、色んなことをしなければいけない。加速度センサーも同様。あと大事なのはジャイロ、JAXAがやっているようなロケットに入っているジャイロっていうのは、レーザージャイロって言って、レーザーで自分がどこ向いているのかってことを検出するセンサーなんですけど、これも高くて、一セット100万円くらいします。でもロケットって、冗長化って言って、1個壊れても大丈夫なように、3つ積んでたり、5個積んでたりするんですけど、レーザーのジャイロを5個積むだけで500万円。まあJAXAのロケットからすれば、大したことないんでしょうけど、そういったものも必要であると。ただ、僕らはレーザージャイロ使えないので、MEMSって言って半導体のジャイロを使ったりするんですけど、これがまたドリフトって言って、誤差があって、どんどんズレていっちゃう。よく昔のカーナビなんかで走ってたら、いつの間にか海の上走ってたみたいな話ありますよね。あれです。ああいうようなことが起こってくると。
ドリフトしないようにソフトウェアの方で色々やらないといけない。

それと、もう一つ再生冷却、ロケットエンジンって燃焼室が4000度とかいって、金属全部溶けちゃいますね。なので冷やさなきゃいけないです。冷やすためには空気無いので液冷になるんですけど、それもロケットってのは重さっていうのが凄くシビアにでてきますので、推進剤、燃料を使って冷却する再生冷却っていうのが普通なんです。ただこれがまた難しいんです。簡単に言うと、車のラジエーターをエンジンの燃焼室の回りに巻いてるみたいな状況で、例えばラジエーターって細かい管がぐにぐにって感じになってるんですけど、あれ職人技でろう付けしたりして、大変なんです。だからすごい高いんですけど。これ今話題の3Dプリンタで作ろうとしてます。3Dプリンタで鋳物の型をつくる。そこに金属流し込んで大量生産できるようにするような技術。こういうのができるようになったことは我々にとって凄く追い風なんですね。これ今どういうとこに使われている技術かっていうと、ハイブリッドエンジンの車ってモーター積んでますよね。モーターも熱くなるので、モーターケースって3Dプリンタを使った鋳物の技術で作られてる。中の複雑な冷却のための管の形状なんかを鋳物で作って、大量生産をしていると。その技術はそのままロケットエンジンに使えるだろうと。そういった新しい技術も我々は取り込んでやってます。

 

来年中には高度100kmの宇宙へ

Image credit: NASA

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ということで、ちょっと話が飛ぶんですが、我々2013年秋、冬、2014年春、また打ち上げ実験をして、2014年中には高度100kmを越えると。
高度100kmを越えると一応国際的には宇宙と認識されてます。で、これだけじゃダメなんですね。皆さんご存知の国際宇宙ステーションとか通信衛星とかそういうのが飛んでいるのが、高度300km、400kmくらいのところで、しかも地球に落ちないで、ぐるぐる回らないといけない。そのために第一宇宙速度ってものすごい速度を出さなきゃいけないんですけど。それにはまだまだハードルが高いんですけれど、我々はそれを目指していると。で、一回の打ち上げを10万ドル台にしたい。これってもう宇宙関係者が聞いたら嘘やろーっていう話なんですけど、それを本気で実現すると。ロケットといえども工業製品であることは間違いないので、大量生産して、市場原理が働けば、絶対にコストは下がるはずであると。我々は信じてやっています。この信じてやるということは凄く大事なことで、日本の例えば車のメーカー、ホンダなんかが日本で車を作りはじめた頃は多分そういうことを考えてたわけです。海外の車のメーカーっていうのはものすごい高い金額で車を出してた。だから車は普及しなかった。なんで車が普及したのか?安くなったから普及したんです。だれでも買えるようになったから普及したんです。これはロケットも同じだと思います。

 

次の夢

Image credit: GETTY

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次の夢っていうことになってるんですけども、有人宇宙飛行っていうのを100万ドル以下で実現したいと。
今7000万ドルかかってます。だから二桁下げたい。これくらいになると、わりと沢山の人たちが今の500人じゃなくて、桁が2つくらい上がって、5万人、10万人が宇宙に行けるようになってくる。そうするともっと安くつくるための技術っていうのが、出てくるかもしれません。僕、一番大切なことは、安くしてみんなが使うようになって、そこで面白いものが出てくると思ってるんですよ、宇宙も。
というのも、私今までITの仕事してたんです。今皆さんスマートフォン使われてますよね。今スマートフォンで皆さん使っている通信速度っていうのは、僕が始めてインターネットを使った時の何百万倍っていう、何千万倍かもしれないですね、っていう速度で使えるようになってる。それも常時接続って使えるようになった。もう常時接続なんて言葉皆さん意識しないかもしれないですけど、たった十年くらい前まではみなさんダイヤルアップでピーガラガラガラって使ってたんですよ。(会場:笑)
だけど、そうならなくなったからこそ、みなさんが使うようになって、色んなインターネット上の面白いサービスやアプリケーションが出てきて、インターネットが社会のインフラになったわけです。これ宇宙でも同じことが起こると私は信じてる。

で、私はとりあえず、今思いつきのものなんですけど、小惑星でウランを採掘し、原子力ロケットエンジンを使って、例えば太陽系の外に行ってアバターに出てきたような星を探索してみたり、とかそういったことを考えてます。ということで僕の話はここまで終わりですけれど、何が大事かって、さっきの浅田さんもおっしゃっていた通り、失敗を恐れず、とりあえず思いついてやりたいことをやることが、凄く大事なことだと思います。我々も実は、2006年からロケットエンジン作りはじめてるんですけどもう7年くらい経ってます。まだ高度5km、10kmくらいしか行けてないですけれど、絶対僕は100kmいって、軌道飛行して、小惑星行ってウラン採掘して、他の恒星系に行けるというふうに完全に信じちゃってるんですね。それが大事なことかなと思います。

 

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