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【インタビュー 1/2】株式会社ispaceの目指す月面探査チームHAKUTOの「いま」と宇宙開発の「これから」

Image credit : astroprenuer

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アストロプレナー編集部は、ちょうど1年ほど前にも袴田氏にインタビューさせて頂いており、その時にはまだHAKUTOの前身、ホワイトレーベルスペース(WLS)というチーム名で活動していました。

Googleがスポンサーを務める月面探査賞金レース「GLXP」において、非常に重要なポイントとなる”中間賞”にノミネートされたことを機に、今回HAKUTOの『いま』とそのプロジェクトを企画・運営するispace社の目指す『これから』についてじっくりお話を伺ってきました。

①HAKUTOの「いま」、②ispace社の目指す「これから」、について順に掲載していきたいと思う。

 

Google Lunar X-Prize(GLXP)についての詳細は こちら 。

HAKUTOの概要については こちら をご覧ください。

 

※聞き手が山崎、話し手は袴田武史氏

 

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①HAKUTOの「いま」について

 

―今回GLXPの中間賞にノミネートおめでとうございます!!まず初めに、中間賞のノミネートが発表された時の素直な感想を教えてください。

 

(袴田氏)かなりドキドキでしたね。昨年の11月中旬に書類審査のための書類を提出していたのですが、その公式な発表が一般公開されたのは、今年の2月中旬でした。けれど実際には、我々は1月末ごろにすでに結果が出ていまして、それまでがかなりドキドキでした。われわれは12月末までに発表されると聞いてたので(笑)

 

―それはドキドキしますね。

 

我々は技術力を売りにしてきました。もし中間賞が取れないとなってしまうと、今後どうしようもなくなってしまうので、確実に9月末の中間賞を獲得したいと考えています。ノミネートチームが発表されるまではかなり不安ではあったのですが、それでもやはり、技術力にはかなり自信があったので信じていましたね。

 

―つまり、このノミネートされたことで技術力が実証されたということですね。

 

中間賞には、着陸技術、走行技術、画像処理技術の部門があり、それぞれ3,4,4チームの最大11チームが選ばれます。我々の強みは開発がローバーのみということと、そのローバー開発においては宇宙探査ロボットの専門家である東北大の吉田教授との共同で開発していることですので、かなり自信はありました。それを審判団がきちんと理解してくれることが一番重要になるだろうと思っていましたね。

 

―どのような開発計画を審査団の方へ提出しましたか?

 

製造するローバーのミッションの概要だとか、そのためにどうゆうローバーを載せて、それをどのように開発して、リスクはどこにあると考えられるか。さらに、そのリスクを解決するためにするためには、どうゆう設計にして、どうゆう実験で検証するのか。これらの内容の書類を英文で150ページ程度になっていました。

最終的にノミネートされたのは計5チームで、それぞれの部門で重複しています。逆に言うと、5チームしか技術的に進んでいるチームがなかったことになります。自分たちも含め、彼らはこれから9月末までに、技術検証して、実際にモノを作って、テストをして、という課程を越えて、この賞金が得られるでしょう。この中間賞の賞金はノミネートされた全てのチームに受賞権利があるので、失敗しなければ我々はもう得られるということです。

 

―開発しているローバーに関しては、現地点でどの程度目標達成に近づいていますか?

 

ものとしてはもうすでに動いています。中間賞の一つの基準がFM(フライトモデル)に近づいていることなんですね。FMとは実際に宇宙で飛ばせるモデルのことです。

我々がこれまでデモンストレーションしてきたものは地上用のモデルであって、宇宙仕様になっていない。それで地球上で使えるものを使って、機構などの基本的な仕組みのシステムのチェックをしている段階です。

なので、これから宇宙仕様にしていくことが必要で、我々はFMに近いモデルである、プレFMを9月までに作っていく予定です。その後、打ち上げに向けて10月くらいから最終的なFMを作っていこうということです。

 

―もう開発については大詰めの時期だと思うのですが、今後の開発に何が一番重要になってきますか?

 

やはり、引き続き資金調達が必要になってくるでしょう。

以前まで我々は、2輪タイプのローバーのみの開発を前面に押し出していました。その理由は、相乗りの打ち上げ費が重量によって変わってくるので、できるだけコスト下げたかったためです。しかし、この中間賞の獲得をきっかけにもっと多くの資金調達ができるようになるだろうと考えているので、本来やりたかった方に振ってみようと、動き始めています。

具体的には4輪タイプのローバーと対向2輪タイプのローバーの2タイプを組み合わせた「デュアルローバー」を開発し、月面の縦穴を探索できるような仕様にしたいと思っています。そうすると科学的な調査もできるようになるので、GLXPのミッション以上のことをやってのけようということです。

 

―なぜ縦穴を調査できるような仕様にしたのでしょうか?

 

まず、縦穴というのはこれまで上空で人工衛星が撮影した程度のものしかなくて、解像度がまだまだ荒い。なので、近くから直接縦穴を解像度の高い画像で撮影し、送信するだけでも十分価値があります。

次に、縦穴を見れば掘ったりせずにそのまま地層を見ることができるので、月の歴史がわかる。そうすると、月というものが本当にジャイアントインパクト説で地球の一部が飛んで行ったものなのかどうかがわかってくる可能性があります。

さらに、縦穴の中にはトンネルが走っていると言われており、はるか昔に溶岩が流れてできた空洞の一部が崩れ落ちて、縦穴になっています。このトンネルは月面から50mの深さがあるので、太陽からの放射線を遮断し、温度帯が安定しているというメリットが考えられます。実際月面では昼 120℃、夜 ―150℃という激しい温度変化があるのですが、トンネル内では、直射日光が入らないので-20℃~-40℃と低いながらも気温が安定しており、将来基地にしやすいと考えられています。ということは、このトンネルが今後の月面開発で非常に重要になってくると考えられるので、我々がいち早く探索しようということです。

 

―これからの資金調達の仕方についてはどのようにお考えですか?

 

今開発しているデュアルローバーだとおよそ30億円、2輪タイプのローバーだけでも10億円程度かかります。これらはコスト面で大きな開きがあるので、今はまず、10億円を目指して、スポンサーや投資家さんから資金調達していきたいと考えています。先日1億円ほどの資金を調達できることが決まったので、順調に進んでいると言えますね。

 

―ローバーの相乗り先となる打ち上げ機の契約は確定することができましたか?

 

はい、契約先がどことはまだ発表できないですが、打ち上げ契約の方も順調に進んでいます。近いうちに発表できると思いますよ。

 

―あと残り2年を切りました。他チームの今度の動きをどう予想しますか?

 

1つは、まだ半分くらいに減る可能性があるということ。また、単純に解散してしまうチーム、合併したりするチームも出てくると思います。あとは、我々も相乗り打ち上げなので、他チームと一緒に行くことになると思われます。

ただ、多くのほとんどのチームが中間賞の書類を提出したと聞いているので、あえて書かずに受賞を避けたというチームはないはずです。書いたのであれば審査団によりチェックされているので、今回の中間賞に選ばれていないチームは技術的にまだまだ未熟であり、実現性は高くないと予想されます。

中間賞にノミネートされたチームはきちんと構想が出来あがっていて、実際にFMまできちんと開発が進められる体制が整っていると言えます。そう考えると、もう5チームしかないわけですよ、正直。

 

私の知っている限り、現段階でローバーをロケットに乗せる契約ができているのは、アストロボティックとバルセロナムーンしかないはずです。バルセロナムーンは中国との打ち上げ契約しており、ランダーとローバーを開発しています。ただ、彼らは実質的な打ち上げ契約は済んでるけれども、今回中間賞に入っていないので技術的に飛べない可能性もあるのではないかと思っています。

さらに、ムーンエクスプレスやオメガエンボイは2015年の12月に打ち上げると発表はしているのですが、彼らは乗せてもらう打ち上げ機をまだアナウンスできていないので、実は契約できていないのではないかと考えられるわけです。

この時点で契約できていないというのは普通の打ち上げのスケジュールから考えると、相当危ないと思いますね。

 

―最後に。中間賞を獲得したことが、ハクトにとってどういった意味をもたらしてくれると考えていますか?

 

先ほど1億円ほど獲得したといったのですが、今2輪ローバーを飛ばすだけでも7億くらいかかってしまうので、まだあと5億以上調達しなければならない。賞金の5000万はあまり足しにはならないのですが、まずは確実にそれを確保しなければならないと考えています。

そこで、この中間賞というのが我々にとって非常に重要なキーとなってくれると思っています。というのは、実際に賞を獲得できるということは、賞金はもちろん入りますが、1つは、技術的に確実に飛べる状態にあるということ。打ち上げの1年前に飛べる状態にあることになるので、技術的な信頼性が非常に高いと言えます。

もう1つは、中間賞を取ることで、第3者の目から見てオーソライズ(公認)された、ということが言えるでしょう。我々の発言だけではどうしても信じてもらえないこともあります。けれども、受賞の如何は専門家からなる審判団の判定によるので、非常に信頼性が高いことを証明できるわけです。

なので、我々の開発は大きく進んでいるので、お金さえ確実に集めることが出来れば、飛ばすことができると言える。多くの方から見てもそのように理解できるので、資金調達がすごくしやすくなるのではないかと考えています。

 

―審判団からのお墨付きが得られたということは今後の大きな実績として繋がっていきますね。ありがとうございました。

 

 

②株式会社ispaceの「これから」 へ

 

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